担当医から
花粉症やアレルギー性鼻炎に対するレーザー治療
スギ花粉症について
いびきに対する超音波振動メス(ハーモニックスカルペル)治療
習慣性扁桃炎と口蓋扁桃摘出術について
慢性副鼻腔炎(ちくのう症)について
滲出性中耳炎について

当科では、患者さんにわかりやすい説明をし、患者さんと一緒に病気を治してゆきたいという理想のもとに診療を行っております。
耳鼻咽喉科には全悪性腫瘍の数パーセントですが、悪い病気も存在します。必要な検査はその必要性を十分に説明し、万が一の場合は躊躇なく大学病院等の高次医療機関にご紹介いたします。

一方、耳鼻咽喉科の病気のほとんどは良性疾患であり、検査や治療には選択の幅があります。患者さんになるべく多くの情報を提供し、それぞれの患者さんに最も適した治療、最も満足していただける治療を御一緒に探してゆきたいと考えています。「長く通院するのはいやだ。」「なるべく早く治したい。」「原因を知りたい。」「薬はなるべく飲みたくない。」「検査は高いのでなるべくなしで済ませたい。」「痛い治療は絶対にいやだ。」などなど、お気軽に御希望をお知らせ下さいます様お願い致します。

小児から大人まで、アレルギー性鼻炎は年々増加しています。これは、大気汚染などによる環境の変化や、食生活の変化などが原因といわれています。アレルギー性鼻炎の症状は、鼻づまりやクシャミ、鼻水といったものです。何に対してアレルギー反応を起こしているのかは個人により異なりますが、1年中症状がある方はダニやハウスダストに反応している場合が多く、季節的なものは花粉症であることが多いです。

「鼻炎のためずっと薬を飲んだり点鼻薬を使用したりしているが、なかなかよくならない。」「鼻づまりがひどく、耳鼻科に通っているがよくならない。」「忙しいのでなかなか通院できない。」「毎年花粉症に悩まされるが妊娠中、授乳中のため薬が飲めない。」という方などに、レーザー治療は最適です。鼻粘膜の表面をレーザーで薄く焼くことにより、花粉などの抗原が粘膜についてもアレルギー反応が起きにくくし、腫れた粘膜を収縮させることで鼻閉を改善させます。レーザー治療は外来日帰りでできる治療で、綿棒処置が可能であれば7歳位の小児からでも可能です。ただし、鼻中隔弯曲症やちくのう症のある方はそうでない方に比べて治療効果が落ちる場合がありますので、まずは診察が必要です。

レーザー治療の有効率は、鼻づまりに対して約90%、くしゃみ、鼻水に対しては70〜80%です。効果は平均で2年くらい、長い人で5年ほど持続します。治療は花粉症の方に対しては1ヶ月に1回を3ヶ月ほど続けます。スギ花粉症に対しては症状がない11、12月頃から治療を始め、1,2月までに3回終了するのが理想的です。(花粉の飛散が始まると鼻粘膜の過敏性が亢進し、治療後のダメージが強くなり過ぎるためレーザー治療は原則出来ません。)

ダニやハウスダストの通年性アレルギー性鼻炎の方は、1回ずつ効果を見ながら十分な効果があった時点で終了になります。花粉の飛散時期に関係なくいつからでも治療を開始できます。

レーザー治療の実際は、鼻スプレーの後、綿棒をたくさん鼻の中に入れて軽く麻酔をした後、ガーゼを鼻内に入れて約20分麻酔を行います。(注射はしません)前日当日の食事制限や前投薬なども不要です。治療自体は両鼻10分位で終了します。治療中たまにチクッと一瞬感じることがありますが大きな苦痛はありません。治療後はそのまますぐに帰宅していただけます。

治療後1、2週間(多くの方は3,4日)ほどは治療のダメージとして鼻症状が一時的にひどくなったり、鼻をかむと少量の鼻血が混じったりしますが、その後快調になってきます。基本的には次回の治療日まで通院は不要ですが、一時的にひどくなった期間に通院できればより楽に経過します。鼻本来の機能(嗅覚、加湿など)への影響はありません。

レーザー治療の費用は、3割負担の方で手術料が1回(両側で)5400円です。

スギ花粉症は、年齢に関係なくある年から突然発症してしまうアレルギー性鼻炎の一種です。一度かかると自然に治ることは5%以下で、免疫の衰える70歳くらいまでクシャミ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといった症状が毎年2〜4月まで続きます。スギ花粉症とはスギの花粉に対する過剰な生体反応がその本態ですので、日常生活に支障がないようにコントロールするのが治療の目標です。このためには花粉が飛んで、症状が出てから治療したのでは本当は遅いのです。来年以降の春に備えて以下のような検査、治療を行いましょう。

検査
アレルギー性鼻炎の原因を調べる(採血)
スギ花粉症の方でも、アレルギーの原因が純粋にスギだけとは限りません。むしろ、他の原因も合わせて持っている人(重複抗原)の方が多いのです。今は2〜4月しか症状がない方でも、将来、ハウスダストなどの通年性の症状も出てくることもあります。また、5月まで症状がある方は、ヒノキ、カモガヤなどの原因もある人です。採血により、各々の抗原に対する反応の強さも分かり、治療方針決定や予防の目安にもなります。この検査は、7種類の抗原を調べた場合3割負担で3500円ほどかかりますので、患者さんのご要望に応じて検査を行います。

副鼻腔炎(ちくのう症)の有無をしらべる(レンドゲン)
アレルギー性鼻炎がある人には、大人の約40%、子供の約60%に副鼻腔炎の合併があります。特に黄色や緑色など色のついた鼻水がある方、ほっぺたや目の内側が重い感じのする方はレンドゲン検査で副鼻腔炎の有無を確認しておく必要があります。副鼻腔炎があれば抗生物質の追加投与など治療内容が異なって来ますし、副鼻腔炎がよくならないと、アレルギー症状もよくならない傾向があるため同時に治療していく必要があります。

治療
飲み薬、点鼻薬
飲み薬は花粉が飛び始めて症状が出てから使うよりも、花粉が飛ぶ前、症状が出る前からあらかじめ使い始めた方がはるかに効果的で、シーズンを通して症状が軽くなりますので、1月下旬ころから飲み始めるべきです。ぜひ、毎年その頃から当院にご相談ください。

注射
当院では、副作用の問題から一発で効くというステロイドホルモンの注射は一切行っていません。花粉症は季節的なものであり、時期が過ぎればおさまることから、症状が軽い方は飲み薬と点鼻薬で対処するのが一般的です。しかし、症状の強い方、どんな薬でも十分な効果が得られない方などには以下の注射がお勧めです。

1.ヒスタグロブリン注射(*ステロイドホルモン注射ではありません)
一時的に症状を抑える注射です。スギのシーズン中のみ7〜10日に1回、免疫の注射をする方法です。90%近くの人に有効です。体質改善の効果はなく、毎春注射が必要です。この薬は血液から抽出したものですが、もちろん加熱製剤で古くから世界各国で使用されています。
3割負担で1回750円です。

2.根本的に体質を変える注射(特異的減感作療法)
いわゆる体質改善治療といわれ、スギ花粉の飛散がない時期から、少しずつスギ花粉のエキスを注射し、自分で免疫を作る治療です。古くからある唯一根本的なアレルギー性鼻炎の治療法です。成功すれば一生花粉で悩むことはありません。症状の再発もきわめてまれです。ただし、数年にわたって継続的通院が必要なこと、稀ながら全身性のアナフィラキシー反応を起こすこと、スギ花粉に対しては成功率がやや低いこと(約50%)により、なかなか普及されなかった治療法ですが、他の治療では得られない完治が可能であるため、最近見直されてきている治療です。具体的には、週に1、2回の注射を約4,5ヶ月、以降は2週に1回を最低2年継続していきます。患者さんの根気が何より必要です。6歳から可能で妊婦さんにも施行できます。
ハウスダスト、ブタクサ、アルテルナリア(かび)に対するアレルギーのある方に対してもこの治療は施行可能です。
費用は3割負担で1回200円ほどです。

いびき症に対して、当院ではレーザーや高周波メスより疼痛が少なく、術後の浮腫が起きにくい超音波振動メス(ハーモニックスカルペル)を用いた手術を行っています。超音波振動メスとは、メスを1秒間に55500回振動させることにより組織を切開、止血するものです。組織の熱は63度までにしか上昇しませんので、レーザーや高周波メスのように高温による周囲組織への影響が少ないわけです。

この手術は、口蓋垂(のどちんこ)を短くすると同時に周囲の後口蓋弓という粘膜の一部を切除することにより、のどのスペースをひろげ粘膜の振動をなるべくおきないようにし、いびきの音量の軽減を目的とする手術です。

しかし、いびきのある患者さん全例にこの治療ができるわけではありません。睡眠中に呼吸が止まるような方は、程度が強ければ睡眠時無呼吸発作症候群と呼ばれ、このような患者さんでは手術後、長期的にみると10%ほどの方で無呼吸が悪化するとの報告があります。そのほか、鼻づまりを改善させるだけでいびきの改善が期待できる場合や、扁桃腺を摘出した方が良いような場合など様々ですので、まずは診察が必要です。

超音波振動メス(ハーモニックスカルペル)治療の費用は、3割負担の方で手術料が35100円です

口を開けたときに見える、のどちんこの両側にある塊(かたまり)が口蓋扁桃です。ここに細菌がついて急性扁桃炎になると、のどが痛くなったり高熱が出たりします。この急性扁桃炎を繰り返す状態を習慣性扁桃炎と呼びます。習慣性扁桃炎の一つの原因として、鼻づまりがあります。鼻は加湿器や清浄機の役割があり、特に夜、鼻が詰まっていると乾燥した空気が直接のどに入り、ウイルスや細菌が付き易い状態になるのです。

習慣性扁桃炎に対する手術を口蓋扁桃摘出術と言います。習慣性扁桃炎は良性の疾患ですので、手術によるメリットとデメリットを考えあわせた上、手術適応を判断いたします。

手術によるメリット:
急性扁桃炎を繰り返す可能性がなくなり、高熱やのど痛が頻回に生じる可能性が極端に低くなります。これにより学校や職場を休むことが少なくなり、急性扁桃炎の都度、病院に行ったり薬を飲んだりする必要がなくなります。ただし舌や鼻の奥には口蓋扁桃と同じリンパ節でできた組織がたくさんあり、それらに炎症が生じると、高熱を伴うことは少ないのですが、のど痛は出現することがあります。

手術によるデメリット:
ずっと以前は、少し口蓋扁桃が大きい位でも手術が行われ、術後の免疫力の低下が危惧されていました。口や鼻は、人体にとって外敵である細菌やウイルスの進入経路として最も大事なところです。しかし、ここには口蓋扁桃以外にも、たくさんのリンパ組織が存在し、口蓋扁桃摘出術後に風邪を引きやすくなるとか、長期的に免疫力が低下するというデータは存在しません。それより、患者さんにとってのデメリットは、1週間ほどの入院が必要なこと、全身麻酔を受ける必要があること、3割負担だと10〜15万円程の費用が必要なこと、術後出血の可能性があること、術後疼痛があることだと思います。術後出血とは、口蓋扁桃摘出術の術後、特に1,2日後に術創から出血することです。術後の疼痛に関しては、昔は術後2,3日ほどほとんど摂食ができない患者さんもいたのですが、薬剤の使用で手術翌日よりほぼ全例の方が柔らかい食事の摂取が可能です。しかし半数くらいの方は退院時も軽度の痛みがあります。

慢性副鼻腔炎は鼻の周りにある副鼻腔という空洞に慢性的に炎症が起こり、膿がたまる病気です。鼻づまり、色がついた鼻水、頭重感がつづいたり、においがわかりにくくなったりします。鼻水がのどに落ちてきて、咳や痰が出たり、中耳炎や気管支炎の原因にもなります。「昔の子供は皆青っ鼻をたらしていたから大丈夫。」と考えるのは子供さんの将来を考えると賛成できません。頭、顔面や頬などに重たい感じが生じて、注意力、根気力がなくなり勉強に差し障りが生じたり、将来的に手術が必要になったりすることがあるからです。黄色や緑色の色のついた鼻水が頻繁に出る子供さんは要注意です。

初めて色のついた鼻汁が出た場合は、急性鼻炎や急性副鼻腔炎が考えられ、抗生物質の内服等により、慢性にならないようにしっかり治すことが大切です。色のついた鼻汁が長く続いている場合や、何度も繰り返している場合は、慢性の副鼻腔炎になっている可能性があり、4,5歳以上であれば、鼻汁が止まった後に一度レンドゲン検査を受けられることをお勧めします。鼻水が止まっているのにレンドゲン上ほっぺたの部分などに影があるようなら慢性炎症の状態が考えられ、影が消えるまでしっかりと治療する必要があります。

慢性副鼻腔炎の治療にはマクロライドという抗生物質が非常に良く効きます。この薬は、本来は抗生物質であり、常用量で使用すると急性の感染症に対して細菌を殺す作用があるのですが、この薬を常用量の半分で使用すると、粘膜自身が細菌などの異物を外に出す作用を強めたり、膿の成分である白血球が病巣に集まるのを抑えたりする消炎剤としての作用に変わります。慢性副鼻腔炎に対しては、この半分量を数ヶ月単位で使用することにより慢性の炎症を徐々に治していきます。抗生物質としてではなく消炎剤として使用するので長期間にわたり安全に内服していただくことができます。逆に長期間継続しないとこの薬の効果は発揮されません。レンドゲンで影のある慢性副鼻腔炎でも、3,4ヶ月この薬を飲んで、週に1,2回処置に通っていただければ80%程の子供さんが良くなります。

鼓膜の奥にある中耳腔という場所に炎症でできた液体がたまる病気です。1〜6歳位でなりやすく、「かぜ」からおこる急性中耳炎の後になりやすいのですが、放置しておくと、将来的に癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎などの難治性中耳炎に移行し、難聴を残す危険性もあります。滲出性中耳炎は、鼻と中耳腔をつなぐ耳管という管の機能不全と、急性中耳炎がその原因で、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、扁桃やアデノイドの肥大などがあるとかかりやすくなります。
治療は、マクロライドの少量長期投与や抗アレルギー剤などの内服と、週に1、2回程外来で鼻の掃除やネブライザーを行います。マクロライドの少量長期投与は滲出性中耳炎にもよく効きます。

上記治療で改善がみられない場合や、難聴が高度な場合、鼓膜切開という治療があります。鼓膜に小さい穴を開け、中の貯留液を直接吸い取るという治療法です。穴は概ね1週間程度で自然に塞がり、1回の鼓膜切開で滲出性中耳炎が治癒してしまうこともよくあります。ただ、感染を起こしたりして開けた穴が塞がらなくなる事がまれにありますので、切開の時期については中耳炎の経過をみながら判断いたします。

鼓膜切開を繰り返しても中耳炎がよくならない場合、鼓膜にチューブを留置するという方法があります。常に鼓膜に穴があいた状態が続きますので、耳から水が入らないような注意が必要なことと、しっかりした耳栓を付けることや飛び込み、潜水ができなくなることなどの水泳に関する制限が生じますが、鼻の状態がよければ月に1回程度の通院で済む様になります。チューブは鼻や耳の炎症が落ち着くまで半年から2年くらい留置します。



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